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『いつまでも愛して』
著者* 日向唯稀 画* 香住真由
注文
あらすじ 共通しているのは「十九という年」だけ。そんな苦学生・美祢遥とコンツェルンの御曹司・橘季慈は、美男×美男の恋人同士。幾多のトラブルを乗り越え、やっと平穏で濃密な同棲生活を手に入れた。が、遥の父・彼方が現れたことで、季慈とその父・慈の確執が露見する。季慈はいつもの季慈ではなく、遥を避けるような素振りさえ見えて…。遥は今になって最愛の季慈が背負う光と影、その生い立ちのすべてを知ることになる――。
誘惑第三部・永遠恋人シリーズ三冊目。
ジャンル 永遠恋人シリーズ
発行日
2006/03/25
ISBN
800-X
日向唯稀
先生
コメント
私は本当に攻め苛めが好きらしいです。というよりは、どん底で足掻く攻めを心身から支える受けが好き。ある意味これこそが理想の「男前受け」なのでしょうが、愛されれば愛されるほど悲惨な過去とか設定がつくところが、私の攻めの気の毒なところです。とはいえ、このままヘタれてばかりはいられません。ラストでは季慈の肩書きにのっとった攻め様ぶりを発揮させて有終の美を飾りたいと思いますので、どうぞおつきあいくださいね。
『いつまでも愛して』本文抜粋
 
 美祢が近づいても振り向くことさえしない。見えても聞こえてもいないような季慈の傍まで寄ると、膝を抱えた腕にそっと左手を伸ばした。
「お前は、どこにも行ってないよな。お前の精神は、どこにも逝ってないよな?」
 触れた瞬間に力強く掴むと空いた利き手で季慈の頬を撫で、瞼がわずかに揺れたところで、美祢は唇を合わせた。
『遥ちゃん…』
 弥生は息を飲むと、食い入るように二人の姿を見守っていた。
「―――――…っ」
 深々と合わせられた唇に、季慈の両手がピクリと動く。
 美祢がさらに唇を押しつけると、それに応えるように膝も崩す。
『…っ』
 その姿に弥生は黙って身を引くと、扉を閉めてあとは美祢に任せた。
 だからといって扉一枚を挟んだ部屋からは出られなかったが、それでも彼女なりに張り詰めていたものが解けるとポトリと涙を零した。
 この涙が乾くころには、季慈は自ら扉を開く。きっと開いて姿を現してくれることを信じ、隣の部屋で待機することにした。
「っ…季慈」
 そしてそんな弥生の視線がなくなると、美祢は改めて両腕を季慈の首へと回した。
「ただいま…」
 季慈にも自分を抱きしめるよう、言葉ではなくその腕で誘い示した。
「ただいま、き…ぃっ」
 すると、だらりとしていた季慈の両腕が、ゆっくりとだが美祢の背に回った。
 包みこむように両手が背で交差すると、ギュッ…っと力が込められた。
「季慈…っ」
 美祢は、返事がなくとも抱きしめられるとホッとした。
 もっと安心したくて、それから幾度も口付けた。
「帰ってきた。戻ってきたよ、季慈」
 どこからか、何からから季慈の精神を取り戻したくて、吐息まじりに思いを告げる。
「お帰りって、言ってよ」
 季慈が美祢のものであることを、美祢が季慈のものであることを、無性に確かめたくなって、美祢は幾度も季慈に口付ける。

 
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