恋に惑い、怯える。
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『ロマンスの旋律』
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著者*
佐々木禎子 画*
山田ユギ
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あらすじ
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古い一軒家に住む霧原朋樹は邦楽の作曲家で箏の奏者でもある。家を改築して以来、設計技師の矢幡英司が定期的に訪れ家のメンテナンスをしていく。
何事も低体温気味に過ごす朋樹だが、矢幡のきわめて男らしい容貌と強気さにはじめは意味もなく反発。
でも、高校からの友人と他人には言えない関係にある朋樹は孤独ゆえか、矢幡と寝てしまう。そして停滞していた時間と関係が動き出して――。 |
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ジャンル
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社会人、三角関係 |
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発行日
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2005/2/25 |
ISBN
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733-X |
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佐々木禎子
先生
コメント
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箏の奏者かつ作曲家である美人さんと、かっこいい設計技師のお話です。
昔、機会がありまして有名な邦楽作曲家の方の箏の生演奏を間近で聞かせてもらったことがあります。男ならではの迫力と女性とはまた違う色っぽさを堪能しました。
大人の恋愛ものをやりたいなあという野望と共に書いた話です。楽しんでいただけましたら嬉しいです。 |
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| 『ロマンスの旋律』本文抜粋 |
「もう来ないかと思っていた」
つぶやくと、省吾がかすかに笑った。
「そうしようかとも思ったけど……来ちまった。追い出されたらそのときは仕方ないかと思ったんだが――俺のこと追いだすのか?」
問いかけた省吾に、朋樹は微苦笑を返す。
自分が笑んでいることに気づき、朋樹はいままでの、省吾が朋樹に見せた意味不明の笑顔の理由がわかりかけた気がした。切断しきれない曖昧な関係への憐憫としかいいようのない感慨と、切ることのできない自身のずるさへの自嘲。その切なさのなかには、体温のようなぬるい優しさも含まれている。
朋樹は省吾を見ても、その肌に触れても、キスをしても、もうときめきもしないのだ。つかの間の逢瀬のさなかにも退屈と孤独を感じている。そこには、憎しみは欠片もない。困惑と、長く連れ添った者へだけ感じ得る類の情が、自身の内側にある。
とまどいは、ときどき、微笑という表情になる。つまりは、笑ってごまかす、ということなのだろうが。無意識に、自分自身と相手とを、笑うことで煙に巻こうとでもしているのか。 |
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「おまえは、ずるい」
省吾がかすれた声で言う。
「知ってる。でも省吾だって、ずるいよ」
朋樹は立ち上がり、省吾へと歩み寄るとその肩に手を回した。つま先だって背伸びをし、くちづける。濡れたキスをかわし、濡れた声でささやいた。
「ここで、して」
省吾の目が驚きで見開かれる。
朋樹は、ためらう省吾の手をつかみ、自身のシャツの裾からなかへと引き入れた。 |
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